ひゅうまん京都

WEB版 『ひゅうまん京都』

 

 
 
外国事情
(04年12月号)

障害者福祉めぐり日伊交流
 
「障害者福祉の現場の人と交流できたことは、私の人生の大きな転機になる」、そんな感想をもらすロレンツォ・サンドリさん(48歳)。11月12日に来日、20日に帰国したイタリア・ボローニャの社会的協同組合「コーパップス(生産活動および社会的活動のための協同組合)」の理事長を務める、障害者福祉活動、協同組合活動の有力な働き手です。

いこいの村、ほのぼの屋で交流
 
 12日朝、関西空港に到着後すぐに向かった先は綾部の「いこいの村」です。さっそく、しめ縄作りにいそしむ仲間と交流、その鮮やかな仕事ぶりに驚きを隠しません。「収入は如何ほど」と聞き、6種類のしめ縄を1万5千個も作るという話に興味津々(写真)。 次に向かったのは舞鶴の「カフェレストラン・ほのぼの屋」、舞鶴湾に日が沈む光景に、「ほのぼの屋はイル・マーレ(海)だね」の声があがります。サンドリさんは、ボローニャ郊外の小高い丘の上で週末型アグリツーリスモレストラン「イル・モンテ(山の上)」を運営していますので、そんな感想になったのでしょう。
 イル・モンテで働くのは知的障害者、ほのぼの屋は精神障害者と、違いはありますが、障害者の働く場を運営しているという共通点から、西澤心さん(施設長)の説明に耳を傾け、打ち解けて意見交換をしました。

親の願いを受け止めて
 
 13日の大阪での講演会・シンポジウムを挟んで14日には、「らく相談室」で開かれた「社会的協同組合・コーパップスの障害者福祉を学ぶセミナー」に出席しました(次頁写真)。
 「コーパップスは25年前、農作業を主な仕事とする障害者の働く場として発足しました。私はその2年後から関わっていますが、この組織にとって大きな力になったのは障害者の親の活動です。当時、親は、障害児に学校を職業を労働をと声を上げていました」
「コーパップスは、職業訓練を施す、行政などから公園整備などの仕事を受注する、生産した農産物を販売し加工する、デイサービス事業と週末レストランを組み合わせるなどして、障害者の働く場を作り社会参加をはかっています。現在働いているのは40人で8人が障害者です」
「デイサービスを利用している人は約20人、私たちが提供する訓練などのサービスを利用する障害者は百人を越えます。1年間の売上は百万ユーロ(1億3千万円)で、公的機関からの委託金などが40%、農産物の販売収入などが60%となっています」
「社会的協同組合が法律的な裏づけを持ったのは91年のことです。私たちの活動の積み上げが法律を作らせたということができます。しかしながらコーパップスがこの法人格を取得したのは94年のことです」
「イタリアには養護学校はありません。障害児は通常学級に席を置いていますが、一人ひとりに担任教員が配置されています。高等学校になると文系、理系の教員も配置されます。高等学校では、学外の施設などで職業訓練を受けますが、私たちのコーパップスでも、毎年何人かの生徒を受け入れています。学校時代の発達・生育・職業訓練歴は、社会に出ると職業紹介所に回され、障害者の就業時に生かされます」
「私たちの活動にとって大切なのは地域とのつながりを強めることです。例えば、コーパップスで働く障害者の何人かは、地域医療公社が経営しているアパートに住んでいます。あるいは、私たちはこの公社と協働して知的障害者の自立のための訓練を行っています。Tコミュニティちょっとサービス_といった、地域への奉仕活動に取り組んでいます」
「ボローニャ県は社会的協同組合の活動が活発な地域です。現在、百を越える社会的協同組合が活動しており、1万9千人が社会的協同組合が提供するサービスを利用しています。ここでは4千5百人が働いておりそのうち障害者は百五十人です。賃金に差異は一切ありません」

 *    *    *

 農学部学生だったサンドリさん自身は良心的兵役拒否を契機に、農業中心のコーパップスで働き始めました。農業と障害者福祉を結びつけたコーパップスはイタリアでも珍しい存在だったようです。
 鹿児島(15,16日)、山形(17日)、盛岡(18日)、旭川(19日)、神戸(20日)と列島を縦断して、サンドリさんは21日、京都に帰ってきました。折からの「弘法さん」で少しだけホッコリ、夕刻の「さよならパーティー」に出席しました。
「12月4日には、コーパップス創立25周年を記念する総会と祝う会があります。最重度の障害者を受け止めて療育活動をしている現場、障害者の仕事と余暇のために必死になっているようすをコーパップスの仲間に伝え、活動に役立てたい」と感想を述べ、別れを惜しみました。


 
 


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