(05年8月号)
3月19日に開かれた「シンポジウム・大往生の条件―長寿社会を生きる」(同志社大学)での医師・色平哲郎さんのお話しを、編集部の責任でまとめたものです。
京都大学医学部卒の内科医、長野県南相木村国保直営診療所所長。60年生まれ。著書に『大往生の条件』(角川書店)など。 |
最終回 弱さを絆に
私は若いころ、世界を放浪しました。アジアでも多くのことに出会いました。
HIV感染者、ハンセン病者などが差別と偏見の中で苦しんでいる姿にも出会いましたし、臓器、女性、武器、麻薬を扱うことによって、法外な利益を得ている連中がいることも知りました。
そして、例えば、臓器売買に手をかすことで金持ちになる医者にも出会いました。
そこから、私は自分の生き方を、あるいは医療の在り方を学んだように思います。
死ぬことより感じること、信じ込むことよりも疑うこと、覚え込むことより忘れることが大切だと考えるようになりました。
金持ちをめざす世の中です。だからこそ、心持ちのありようをめざして生きたいと考えました。
今の世の中は、一方的な物言いがまかり通りがちです。強いものが、早いものが、金持ちがよしとされる世の中です。
登る人生から降りる人生を、世の中から冷たい風が吹いてきたら暖めて風を送り返そう、そんな風に物事を考える人たちがいます。
弱さを絆に生きていける地域でありたいと思います。そんな地域医療の担い手であることを願ってもいます。
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