[掲示板に戻る]
生活保護問題での障全協の声明 松本 - 2012/06/13(Wed) 11:14

 増加する生活保護受給者を抑制する動きが、芸能人の家族に受給者がいたことを材料に、マスコミも含めてさらに強まっています。
 このような中で、大阪では生活保護を受給している軽度の精神障害者や知的障害者が受給要件を満たしているのに受給辞退を申し出たというようなことが伝わってきました。
 このような事態を見過ごすわけには行きません。
 少し長いですが、障全協の緊急声明を紹介します。

生活保護制度に関する異常報道に抗議し、冷静な議論を求める緊急声明
2012年6月12日
障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協)

 国会での生活保護問題の質疑を発端に、一部マスコミで異常というべき報道がされている。
 これを受けて、小宮山厚労大臣は、「親族側に扶養の困難な理由を証明する義務を課す」等の発言を行い、6月4日に公表した「生活支援戦略」骨格において、「生活保護制度の基準額の引き下げ、現物給付化、扶養義務強化の検討をすすめる」と言明した。
 私たち障全協は、結成以来、45年にわたり「権利」としての施策の拡充を訴え続けてきた。
 この点から見て、今回の「生活保護問題」に対する国会・政府の対応は、社会保障全体を引き下げるために、異常報道を利用していると言わざるを得ない。こうした権利保障とは相いれない方向での施策の誘導に強く抗議し、冷静な議論を求め、以下の問題点を指摘する。

第一に、今回の異常報道は、そもそも「生活保護法上、扶養義務者の扶養は、保護利用の要件とはされていない」にもかかわらず、いかにも保護受給者に「不正受給」が多いかのごとく偏った内容で伝えられていることは大きな問題である。
 さらに、今回の問題を契機に、生活保護の「指導等の強化」を徹底し、「扶養可能な者には適切に扶養義務を果たしてもらうための仕組みの検討」等を、厚労省がいち早くすすめようとしていることは、生活保護の実態を無視した国の暴挙と言わざるを得ない。

第二に、政府は、年間3兆円を超した保護費をいかに抑制するかを検討課題としているが、そもそも、雇用崩壊や高齢化が進展する中で、雇用保険や年金等の社会保障制度の水準があまりにも低いことに最大の問題がある。こうした事態を放置したままで、生活保護の抑制を行えば、さらに、社会的貧困が加速されることは火を見るより明らかである。
 また、保護受給者の自殺率が一般の2倍あり、さらに、20代のみでは6倍あるという実態(「生活保護受給者の自殺者数」2011年7月12日社会保障審議会生活保護基準部会参考資料より)は、まさに、受給者、とくに若年層の「生きづらさ」を物語っている。
 さらに、東日本大震災においては、保護受給世帯が今年4月までに1,200世帯を超え、申請1、757件、うち受給が1,222件(受給内訳:高齢228、障害264、母子134、その他596)であったことを踏まえれば、復興対策の一環としての生活保護支給拡大が求められている。

第三に、一方、保護受給者の割合を見ると、高齢者42%(63万527世帯)に続いて、傷病・障害者世帯が33%(48万6,729世帯)、母子世帯7.5%(11万2,011世帯)となっており(2011年度厚労省調べ)、受給者の3分の1が、患者や障害者である。このことは、多くの障害者が「健康で文化的な最低限度の生活」を得るためには、生活保護を利用せざるを得ないことを示している。仮に、保護費の引き下げや扶養義務の強化がなされれば、障害者、家族の生活がより貧困になる事態が起こりかねない。これまで、障害者分野では絶えず、この扶養問題が議論されてきたが、日本の「家族介護依存型福祉」の実態は何ら改善されておらず、今回のことで、より家族依存が深刻化するようなことは、絶対にあってはならない。

最後に、今回の問題で、社会保障や福祉制度の公的責任を後退せるために「扶養義務」「親・子の道徳観」等を振りかざし、「権利としての社会保障制度」の抑制を図り、本来、国が果たすべき役割を個人や家族の責任に押し付けることは決して許されるものではない。
 各報道機関をはじめ国会、政府においては、上記の指摘を踏まえ、国際的施策動向に立ち遅れることなく、「権利としての社会保障」のあり方について、真摯な議論と緊急の対策改善をすすめるよう、強く要望するものである。

 

おなまえ
Eメール
タイトル  
メッセージ
参照先
イメージ [アイコン参照]
削除キー (記事の削除時に使用)
文字色
クッキーを保存